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クレーン車で揚げようとしたがどうしても揚がらず北洋サケマス船はブルトーザーで引っ張られ、解体して倉庫に運ばれた


 蔡の性格は大陸的だ、という人が多い。ひと言で言えばおおらか。どんなに追い込まれても切れない。失敗したらどうしよう、とも思わない。批判されても落ち込まない。それを良い方に転換する。実に魅力的な人間だというのだ。だから引き込まれる。
 例えば、地平線プロジェクトに補助金が200万円付いた。失敗したらパァー。事務方はやきもきした。でも蔡はちっとも心配しない。「かりに失敗してもそれはそれで作品なんですよ」とけろっとして言う。「海に火を走らせる、それは環境汚染だろう」と言われた。それに対しても「その人もプロジェクトの参加者ですね。反対する人もいないとだめなんですよ」と、逆にスタッフを励ました。だから、みんな気分良く作業を続けた。

ボランティア

 いよいよ、砂浜に埋まっている廃船を掘り出す作業が行われることになった。志賀忠重が蔡と一緒に土建会社や重機会社を回り、予算がないことを告げて何とかボランティアでやってくれないか、お願いした。深く埋まっている船を掘り出し、それを道路の近くまで運ぶ、さらにそれをバラバラにして保管場所の小名浜海陸運送の倉庫まで持って行く、というもの。それは、まともなら莫大な費用がかかる作業といえた。
 しかし現実的には、廃船のありかを教えてくれた潜水業者の佐藤進の口利きが功を奏して、実にスムーズに交渉が進んだ。志賀が趣旨をていねいに説明し、予算がないことを告げると、「わがったわがった、まがしておぎなって」と言った。会う人会う人そうだった。中にはボランティアの意味をわからず、「はいよ」と言ってしまったあと、そばにいた社員に「とごろでボランティアって何だ」と尋ね、「なに言ってんですか。ただでやってあげることですよ」と言われる社長もいた。すると「言っちゃったんだも、しゃんめ。やってやっぺ」と言った。
 志賀は頭が下がる思いだった。そして必ず「お手数かけますがよろしくお願いします」と心を込めて言った。外に出ると蔡が「さっき言っていた言葉を教えてください」と言う。志賀が日本語の堪能な蔡に教えた言葉が、そのお礼と感謝の言葉だった。その後、協力依頼に歩くたびに、2人は声を合わせ、感謝の気持ちを込めて「お手数かけますがよろしくお願いします」と言うのが決まりになった。

貪欲に教わる

 蔡という人は、教わることを恥と思わないところがある。自分が知りたいことは貪欲に質問し、自分のものにした。だから、教えを乞う人にはそれこそ何でも教えた。酒の席だった。乾杯の音頭をとった出席者が「みなさんの隆盛を祈って」と言うと、すかさず蔡が「リュウセイって何ですか」と聞いた。さらに、隣に座った花火を撮っているカメラマンが花火について質問した。蔡はそれこそていねいに、しかも良心的に、自分の知っていることを語り続けたのだった。

2日がかり

 掘り出し作業当日。バックホーやクレーン車、ブルトーザーなどが用意された。仕事の合間を見ての期日設定。なんとか1日で引き揚げ作業を完了しなければならなかった。しかし、作業は難航した。深く埋まった船は巨大だった。しかも、船体に使われているケヤキの木がかなり朽ちていた。掘れば掘るほど海水が出た。クレーンで上に揚げようとすると、船体がきしんでバラバラになりそうになった。「だめだだめだ」。男たちの大きな声が海岸一帯に響き渡った。「押して動かすしかねえんでねえが」。「うん、引っぱっぺ」。ブルに縄をかけ、道路近くまで引くことにした。作業は予定の時間を軽くオーバーし、2日がかりになった。
 やっと道路近くまで持ってきた船を、切断してバラバラにした。それをクレーンで根気よくダンプに積み、倉庫に運んだ。どの顔も輝いていた。満足感でいっぱいだった。志賀は、一人ひとりの顔をぐるりと見渡しながら、「みんなが気分良くやれてよかった」と心底思った。
(この項つづく=敬称略)



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