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人生、フルーツ

 ずっと見たいと思っていた映画で、機会を待っている間に、主人公ふたりの著書を3冊読んだので、これが30畳ひと間の家なのね、はなちゃんのドールハウスだ、などと実際の暮らしを確認するようにスクリーンを見つめた。
 映画は、建築家の津端修一さんと英子さん夫婦の暮らしと生き方を追ったドキュメンタリー。愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンに、師のアントニン・レーモンドの自宅に似せた家を建て、木を植え畑を作った。
 「ほんとうの豊かさというのは自分の手足を動かす暮らしにあると思います」という言葉通 り、ふたりとも毎日、手と足を動かして暮らしている。台所を大切にし、子や孫、友人に自家製のものを送る。修一さんは畑の作物プレートや孫のおもちゃを作り、英子さんは刺繍や編み物、機織りもする。
 ものは高くてもいいものを、時間をかけて買う。いいものは使い込んでよくなるから。例えば、松本民芸家具やアイルランドのベッドカバー、ダンクスの食器。台所で使う調味料なども吟味している。
 修一さんはかつて日本住宅公団に勤め、都市計画に携わった。高蔵寺ニュータウンもそうで、風の通 り道になる雑木林を残し、自然との共生を目指した。ところが完成したのは考案したものとは異なる無機質な大規模団地だった。それで公団を辞め、その場所に土地を求め、里山の一部を担ってまちを再生しようとした。それから五十年、ふたりは自分の手で暮らしを見据え、ときをためてきた。
 2015年6月、修一さんは映画の制作中に亡くなった。享年90。畑の草むしりをしたあと、昼寝をしたまま天国に旅立った。ひとりになった英子さんは、できることをこつこつしながら暮らしている。無理はしない。手に余る木は世話ができる程度に切ってもらう。修一さんが言っていた「人間として、最後まで自分の足で立って生きることが大事なんだ」を思い返す。
 3歳違いの夫婦。英子さんは1月に90歳になり、修一さんと同い年になった。人生フルーツ。映画を見終えて、人生、フルーツと思う。

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