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叔父のくらし

 首都圏で暮らしていた叔父が、定年退職を機に故郷のいわきに戻り、実家に住み始めて半年になる。祖母が亡くなって12年間、農家の大きな家は空き家になっていた。時々、母たちきょうだいが空気の入れ換えや掃除、草むしりなどをし、庭や家周りは庭師にお願いして維持してきた。
 お正月やお盆など年に7、8回ぐらい帰郷していたが、40年ぶりの故郷でのくらし。それも首都圏のマンションに家族を残して単身での移住で、母など3人の姉や親戚 などが近くにいるものの、どんな生活になるのかと周囲は心配して見ていた。
 けれど叔父は以前から故郷でのくらしを思い描いてきたようで、戻ってくる前にいわきでの生活には必需品の車を購入し、それに乗って故郷に帰ってきた。そして生活環境を次々改善し、やりたいと思っていたことをどんどんして、いきいき楽しく過ごし始めた。
 ふすまを開けると8畳間が3、4つ連なる典型的な農家の家。まずシロアリを駆除し、ゆがんだ押し入れの床など、とりあえず目にあまる場所を直して、机や本棚、オーディオを置いて自室をつくった。いまは台所と茶の間のリフォームの設計中で、建築士でもあり、理想のキッチンリビングをあれこれ考えている。
 並行して自宅前の畑を耕し、いろいろな野菜の種や苗を買って育て始め、すでに収穫もしている。料理は当初、ネットでレシピを探して、ローストビーフなど凝ったものを楽しそうに作っていたが、このごろ少し面 倒になっている気配がある。それでも晩酌のための燻製も作り、隣近所におすそわけしている。
 晴耕雨読の静かな生活を想像していた。しかし月に1、2度は首都圏の家族の元に帰って一緒に旅行をし、会社の仲間とゴルフや飲み会を楽しみ、いわきでも地域のゴルフ会に入り、まけ(親族)やお寺の集まりに顔を出し、日々、活動的で忙しそうだ。
 戸惑うことも多かったようだが、このごろやっと生活のペースがつかめ、古い大きな家は少しずつ生活のにおいを取り戻している。これから叔父がなにをするのか、興味津々で見守っている。   

 
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