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伊能栞のこと

 このあいだ、近所の整骨院に行った時、NHKの朝ドラ「わろてんか」が話題に上り、先生に「伊能栞のモデルは松竹の創業者なんですかね、それとも東宝なんですかね」と聞かれた。高橋一生さん演じる伊能栞は貿易会社を営む青年実業家で、エンターテイメントに関心があり、活動写 真を輸入するとともに自ら映画を製作する。
 調べてみると、どうも栞のモデルは実業家で政治家の小林一三(いちぞう)(1873-1957)のようだ。1月3日生まれなので一三と名づけられた。慶應義塾を卒業後、三井銀行に15年ほど勤め、箕面 有馬電気軌道(現在の阪急宝塚線・箕面線)を創設した。
 「あんな田舎に鉄道を引いてどうするのか」と陰口も叩かれたが、沿線の住宅開発を行うとともに、動物園や宝塚新温泉、さらに宝塚唱歌隊(現在の宝塚歌劇団)などをつくって、沿線を発展させ、乗客を増やしていった。大阪・梅田と神戸を結ぶ神戸線も開通 させ、路線の起点の梅田駅に、日本で初めてのターミナル・デパートを設けた。
 さらに1937年(昭和12)に東宝映画を設立。43年には、東宝映画より5年早く演劇や映画の興行を主目的に設立された東京宝塚劇場と合併し、社名を東宝に変更して、映画の製作、配給、興行と演劇興行の一貫経営を始めた。そして50年代、日本映画の黄金時代を迎えることになる。
 1940年(昭和15)、一三は第二次近衛内閣で商工大臣に就任したが、岸信介との対立や軍部批判などにより8カ月で辞任させられた。終戦後、東宝の社長に就いて業績を回復させ、57年、84歳で生涯を閉じた。参考までに、松竹は白井松次郎と大谷竹次郎の双子の兄弟が創業した。

 「わろてんか」の伊能栞は結婚相手になるはずだったヒロインのてんと親交を深めていくが、栞のモデルの一三と、てんのモデルの吉本せいは直接の関係はない。ただ、せいの弟が東宝映画配給の取締役になったり、吉本興行の芸人が東宝映画に出演したりしたことがあるという。そんなことを頭の片隅に置きながら、これからの栞の活躍をドラマで楽しみたい。

 
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