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報恩講の日に

 先日、菩提寺で「報恩講」という行事があった。浄土真宗のお寺なので、親鸞の祥月命日の11月の最初の土、日曜日に毎年、仏法を聞く集いが開かれている。
 菩提寺のご住職は、地域の人々が昔のように身近に思える寺にしたいと考えていて、土曜日の報恩講では「正信偈(げ)」をみんなで声に出して読み、ご住職の話を聞くほかに、身近さにつながることを試みている。
 一昨年は本堂のそばに眠る片寄平蔵、昨年は慰霊碑が建っている沢村勘兵衛の人生と功績を、紙芝居で振り返った。最近は石炭を発見した平蔵や、小川江筋を造った勘兵衛を知らない人もいるという。今年はわたしがバトンを渡され、思案の末、本堂の前に眠る酒井文雄のことを話した。

 酒井文雄はいわきの自由民権運動の壮士で、運動が盛んになるなか、明治政府がいろんな方法で押さえつけようとし、警察に追われた。運動仲間の親戚 を頼って愛知県の刈谷に辿り着き、逃亡生活を送りながら、中央で活躍する日を待った。しかし明治16年、27歳の若さで急死した。
 文雄のことは2011年のお正月版で特集したことがある。墓地は「初代草野村長 酒井義孝翁之墓所」と、文雄の兄の案内が目印で、左の墓に父と母と並んで文雄の名前が刻まれている。山門から本堂に向かう途中、その前を通 るので、文雄のことを知ってほしいと思った。
 当日に渡す資料を作りながら、文雄の人生と自由民権運動とその時代を再度、辿ってみた。遊説内容を読むにつけ、文雄が望んでいた社会は民主主義で、国民主権と基本的人権の尊重(言論の自由を含む)、平和主義(腕力を好まない)を求めていたのがわかる。
 それは、ほかでもない現在の日本国憲法で、その憲法を改正しようとしている政府と、文雄時代の政府の姿勢は似ている。報恩講の日、文雄の話をしながら、そんなことを思った。

 
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