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夏の終わりの夜に

 先日、用事で出かけた際、磐梯町の慧日寺(えにちじ)跡に復元された金堂前で声明を聞いた。
 慧日寺は平安時代の初めに南都(奈良)の法相宗の高僧・徳一によって開かれた寺で、静かな土地で仏教の修行に専念するため会津に赴いたといわれている。天台宗の最澄、真言宗の空海と同時代に生き、現実論の徳一は理想論の最澄と論争を繰り広げたという。
 磐梯山のふもとに建てられた中心伽藍は、南から北に中門、金堂、講堂、食堂と一列に並んでいた。源平の戦いで平家方についたため一時衰退したが、室町時代には復興して門前町も栄えた。
 その後、伊達政宗が会津に侵攻した時、戦火に巻き込まれ、金堂以外は焼失。金堂も江戸時代の初めに焼け、明治の廃仏毀 釈で廃寺になったが、いまは真言宗に属している。2008年に金堂、さらに金堂前の石敷き広場と中門も復元されている。
 声明は仏教声楽で、曲に合わせて読経する。慧日寺跡では震災が起きた2011年から毎年、行われている。県内の僧侶でつくる新義真言聲明 三宝会の18人が今年は四智梵語、散華、金剛界唱礼など6曲を、ライトアップされた金堂を動き回りながら歌った。
 夕暮れどきにほら貝の音で始まり、時間の経過とともに所々のかがり火、点々と並べられた360個ほどの灯籠の明かりが際立ち、声明もより透明に響き渡り、山や空に吸い込まれていくような、幻想的で幽玄な世界に包まれた。それは夏送りの儀式のようにも思えた。秋はもうそこまで来ている。

 
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