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走ることの意味

 脚本家の倉本聰さんが主宰する富良野GROUPの最後の舞台「走る」をいわきアリオスで見た。40人の役者が90分の芝居の間、ひたすら走る。走る以外の動作はほぼなく、せりふも走りながら言う。
 倉本さんはこの舞台の原型を1997年、富良野塾の12期生のために書いた。ひたすら走ろうとする私たちの行動を、過酷な塾生の生活になぞらえて描いてみようと考えた。なぜ芝居はスポーツの感動に勝てないのか、という疑問も常にあったという。
 アトランタオリンピックに向けて走る、有森裕子さんの1年間の日々の心情のつぶやきを追ったラジオ番組の編集テープからヒントを得て、12期生と試行錯誤しながら実験を繰り返して「走る」の原型はつくられた。その後、何度も卒塾公演に使われ、2009年以降、封印されていた。

 倉本さんはいま、82歳。ここ数年は肉体的な負担を減らすため、経験のある役者を起用してきた。しかし最後の舞台演出となる今回の「走る」は、若手に1から教える覚悟で、オーディションで役者を選んだ。
 脚本の原型はあっても、役者が違えば、1人1人の登場人物の背景、性格、人柄なども異なり、舞台は変わってくる。倉本さんは一緒に食事をしながら、役者たちを観察して登場人物の人物像を錬り、脚本を深めていった。
 ドラマづくりでも同じで、登場人物の履歴を細かく書いて、1人1人の人生を深めることに時間をかける。それがドラマの深さに繋がり、見る人のこころを揺さぶる。

 42.195kmを走るマラソンは、よく人生にたとえられる。「走る」ではそれを、1年・365日の時間で表現した。1年の間にはさまざまなことが起き、順風満帆にはいかない。しかし、つまずいても、こころの持ちようで懸命になり、克服できる。
 舞台は、人生を走る、その意味、価値は何なのかを問いかける。その問いを受けながら、私たちも走っている自分に気づき、どう走りたいのかを自分に聞く。
 舞台を見た晩は、走る自分の姿が頭から消えず、なかなか寝つけなかった。

 
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