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案山子の眼

別れの曲


 大黒屋社長の馬目佳彦さんが話してくれた磐城高校時代のエピソードだ。当時の音楽の先生は若松紀志子さんだった。最後の授業で「別 れ」をテーマにクラシック音楽を3曲かけた。その中には、ショパンの「別 れの曲」も入っていたが、「ショパンがいい」という生徒は少なかった。そこで紀志子さんは言う。「あなたたちは『別 れの曲』の良さを、まだわかっていない」
多感な高校生時代のことだ。馬目さんにとってよほど印象深かったのだろう。ことあるごとにその話をした。その後、馬目さんは「第9を歌う会」などの中心的役割を担い、小林研一郎などを支援していく。市民の立場でこれほど明快に音楽を愛し、応援した人は記憶にない。

 「大黒屋破産」のニュースが駆けめぐったとき、真っ先に頭をよぎったのが馬目さんのことだった。商工会議所会頭として忙殺されながらも、正論を吐き続け決して人を逸らさなかった。交流のあった人たちの会合には欠かさず顔を出し、あいさつをした。ただ、このところ、体のシンからわきあがってくるような迫力が顔を潜め、全体的に小さくなったような気がしてはいた。

 「市民と共に歩む大黒屋」。馬目さんはそのキャッチフレーズ同様に、まちづくりのために奔走した。それは「まちが良くなれば企業も良くなる」との一念だったという。しかし現実的には、荒涼としたいわきに「にぎわい」という花の種を必死になってまき続けていたのは、馬目さんだけだった、という感じがしないでもない。
 「冷めてるいわき」を自らの情熱で変えようとした馬目さん。しかし、刀は折れ、矢は尽きた。しかも、その周りには大黒屋の倒産を冷ややかな目で見つめる人たちがいる。決して先頭には立たず、表にも声を発せず、陰口をたたく輩がいる。その行為こそが、突出しようとする力を抑え、平均化する力を助長させている。しかもそこにあるのは、眼光鋭い正論ではなく、上目づかいの沈黙だけなのだ。
 個性や競り合いがなくて、レベルを上げることなどできやしない。地域間競争に勝ち残れるユニークなまちなどできるはずがない。だからこそ、いわきには稀有な、このリーダーを地域が支える必要があった。この穴は、とてつもなく大きい。時がたてばたつほど、実感として迫ってくるに違いない。


 酸いも甘いもかみしめた馬目さんは今、ショパンの「別れの曲」をどんな思いで聴くのだろうか。

2001年6月5日





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