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九丈さん (シンガー)
 
 6月9日にCDデビューした。初めてのCDは「嘘と罪」(ワカジャワカ)。プロを目指して4年、この間作ったオリジナル20曲のなかから、最もできのいい4曲を選んだ。1つのジャンルにとらわれず、ジャズ、ロック、ポップスとあえて幅を持たせてある。最初の一歩、そしてこれまでの集大成のCDだ。
 本名は阿部了さん(23)。千葉の暁星国際高校への進学と同時にいわきを離れ、17歳の時にいわきの仲間たちと遠距離でバンドを始めた。代々、医者の家系で、お父さんは13代目。本来、跡を継いで14代目になるべき身に、無言のプレッシャーがあった。しかし、唯一ほめられた記憶は「声が大きいこと」だった。
 本格的に歌を学び始めたのは19歳の時。ミーシャやスピード、ゴスペルズなどの師でもある亀淵友香さんのレッスンに通 った。スパルタで有名な先生。あまりの厳しさに歌が嫌になり、レッスンは長続きしなかった。
 そんな時、大橋巨泉さんの娘でジャズシンガーの大橋美加さんが「母のところへいらっしゃい」と、誘ってくれた。美加さんのお母さんはジャズシンガーのマーサ三宅さん。週に一度、マーサさんのボーカルスクールに通 い、歌の基礎を学んだ。
 空気にしみ入らせるように歌声は響かせる。ぶっきらぼうではダメ、やさしく歌う。歌手っていうのは少し不器用な方がいい―マーサさんは歌への姿勢も教えてくれた。マーサさんのレッスンを受けているうちに、亀淵さんに厳しく指導されていたことも理解できるようになった。日々、発声の練習も重ね、歌にとって大切なものをつかんだ。
 帝京大学でデジタルビジネスを学んでいた。昨年、歌に専念するために大学は中退し、トーア・エンターテイメントに所属。そしてCDデビューの機会を得た。ディレクターやアレンジャーにも恵まれ、いい環境でレコーディングは進められた。
 思い入れの一番強い曲は「アトレイユ」。恋愛している時に必ず陥る気持ちをバラードで表現した、せつない恋の歌だ。
 高い声に自信がある。それに大きな声。そう言って「コンプレックスの産物」と照れ笑いする。幅広い、巧妙な歌手になりたいという。清々しい目をした新人シンガーだ。






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