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 封切りを心待ちしていた。それなのに公開されても、なかなか映画館に足が向かなかった。1年前、3部作の2作目「二つの塔」を見に出かけた時に、ずらずら行列ができていて2度引き返し、3度目にパイプいすに座って見たから、タイミングをはかっていたわけではない。3年越しの長い旅の終わりを少しでも先延ばしにしたかった。
 はじまりは世界を滅ぼす1つの指輪の存在だった。はるか昔、冥王サウロンが全世界を闇の力で支配するために、自分の邪悪な残忍さを一心に注いだものだ。指輪によってサウロンは身体を失っても魂は生き続けられる反面 、手元になければ自分の力が不完全になってしまった。だから、サウロンは指輪に固執する。
 その指輪をホビットのフロドが伯父の111歳の誕生日にほかの財産と一緒に受け継いだ時から、指輪を滅ぼす旅が始まった。消滅させるためには、サウロンの魂が存在するそばの滅びの山の亀裂に指輪を捨てなければならない。それは種族の存亡をかけ各種族の代表で組まれた9人の“旅の仲間”と、指輪のありかに気づいたサウロンとの戦いの始まりでもあった。
 旅の仲間、二つの塔、そして最終章の王の帰還の3部作は指輪を滅ぼす旅の長い物語だ。でもスクリーンを見つめているうちに物語は物語でなくなり、スクリーンを眺めているはずなのに、いつしかスクリーンの内側でフロドたちと一緒に旅をしている。旅が現実のものになり、彼らのまっすぐで潔い姿勢、生き方、それに温かさにふれて胸は熱くなる。
 もちろん、登場人物のだれにも心情に揺れはある。その揺れを隠すこともせず、結果 的に潔い選択をしている。
 長い長い旅に感じるが、すべては13カ月のできごと(映画制作には7年を要した)。伯父の111歳の誕生日に33歳(ホビットでは成人にあたる)になったフロドは旅を終えた時、34歳になっていた。最終章が終わった時、映画館ではだれからともなく拍手が起こった。「王の帰還」は最終章にふさわしい、そういう映画だ。






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