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第357号

特集 いわきの戊辰戦争 平潟編

ストリートオルガン126
 

画・松本令子

生命の賛歌


 少し前に佐藤しのぶさんのコンサートを聴いた。サントリーホールで毎年、母の日に開かれていた「母の日コンサート」(いまは東京オペラシティコンサートホールでの「母の日に贈るコンサート」に変更)に立て続けに数回出かけて以来なので、ずいぶん久しぶりだった。
 コンサートのテーマは「生命の賛歌」。「世界が平和になるために一つの歌を作りたい」という、しのぶさんの思いから2013年に作られた「Remember」やシューベルトの「菩提樹」、1960年代に雪村いづみさんが歌った「約束」、オーストリアのピアニストのイェルク・デームスさんがシューベルトの「即興曲」に詩をつけた「祈り」などが歌われた。
 それから震災の復興を応援する「花は咲く」。しのぶさんは原発事故後、避難生活を続けている飯舘村の子どもたちを訪ね、歌を贈った。2015年には、しのぶさんもステージに立った東京での震災のチャリティーコンサートに、飯舘村の子どもたちが出演して「花は咲く」を歌ったという。

 その話を聞きながら、以前、NHK衛星第二で放送された、しのぶさんの「世界・わが心の旅」を思い出した。著名人が思い入れのある場所を訪ね、そこへのこだわり、新たな発見、自身を語る紀行番組。しのぶさんは1997年にアイスランドとベラルーシに出かけた。
 ちょうどオペラ「ニーベルングの指輪」の役づくりをしていた時で、そのオペラの原形となった神話はアイスランドで語り継がれ、13世紀半ば、初めて牛の皮に文字で記された。天地創造から世界の終末までの物語。自然のなかから生まれ、戦い、傷つき、自然に帰っていく生と死の繰り返し、いのちの営みが描かれている。
 その番組を録画したビデオがまだ手元にあったのでお正月に見た。しのぶさんが目指したのは神々が住むというゴーダ―ランド。橋のない川をいくつも車で渡り、国土のほとんどが荒れ地と氷河というアイスランドの大地と大自然を体感し、色彩 やにおい、温度、音、リズムなどを自身に刻んだ。
 残念ながら、氷河に阻まれてゴーダ―ランドに近づくことができず、外側からの訪問となったが、しのぶさんは大自然の恩恵を受け、片隅で懸命に生きるいのちの尊さを感じ、なぜ自分が歌い続けているのかに気づいた。神さまから授かった声をいつの日か神さまに返すまで、歌で人々のこころを癒やしたいと語った。

 アイスランドの旅を終え、しのぶさんはベラルーシに向かった。隣のウクライナのチェルノブイリの原発事故からすでに11年が経っていた。ベラルーシでも国土の4分の1が汚染され、50万人以上の人々が住み慣れた土地を離れて暮らしていた。
 しのぶさんが訪ねたのは、甲状腺の手術をした子どもたちが数カ月療養するサナトリウム。出迎えてくれた子どもたちに「いま、みんなが一番欲しいものはなに?」と尋ねると「健康!」という答えがまっ先に返ってきた。
 日ごろ集会に使われている講堂で、しのぶさんは念入りに響きを確かめ、コンサート衣装に着替え、150人の子どもたちを前に自然の美しさや母をテーマにした歌を歌った。リクエストされたシューベルトの「アヴェ・マリア」を歌い終えると、子どもたちからスタンディングオベーションを受けた。
 その旅でしのぶさんは、オペラの楽譜のなかでふれていたものが、楽譜を突き破って飛び出してきたように思ったという。

 小学五年生の時、家族旅行で広島の平和記念資料館に行き、しのぶさんは平和について考え始めた。そして、チェルノブイリの原発事故後のベラルーシを訪ね、その15年ほどあとに福島第一原発の事故が起きた。コンサートでいのちの尊さや生きる歓びなどを歌い続けるしのぶさん。戦後七十年の記念の年に歌い始めた「Remember」は、平和な未来への種まきでもあるという。

 
 



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