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 ことしの2月はじめのことだ。いわきから奈良県の天理に避難している彫刻家の安藤榮作さん(56)の家に一本の電話がかかってきた。岡山県の井原市立田中(でんちゅう)美術館の学芸員からだった。
 「いま、平櫛田中賞の選定をしているのですが、審査員一致で安藤さんが受賞者としてふさわしい、ということになりました。受けていただけませんか」
 岡倉天心を師と仰ぎ続けた具象彫刻の巨匠、平櫛田中の冠がついているこの賞は、作品や制作姿勢に対して「頑張っていますね」と贈られるものだ。安藤さんは思いもよらなかった知らせに驚き、「光栄です。お受けします」と答えた。その瞬間、30年間の彫刻家人生と支えてくれた人たちの顔が、走馬燈のように駆け巡った。

 東京藝大で彫刻を学んだ。そのまま大学院をめざしたが思うようにはいかず、いきなり社会に放り出された。木を素材にした彫刻を始めたきっかけは、植木屋でのアルバイトだった。剪定されて無造作に置かれた木と、行き場のない自分の立場とが重なった。そこから、木とのつきあいが始まる。
 安藤さんの彫刻は、ひたすら木を削ってエネルギーを生み出す作業といえる。それを継続することで、物質である木が生命体へと変貌していく。「ドクンドクン」という鼓動が始まり、精気のようなものが全体に行き渡る。さらに、作品が「自ら立っている」という感じになるまで、あきらめないで作業を続けていく。
 いわきに移住したのは1990年。三和町差塩、田人町南大平、久之浜と住まいを変え、地域の人たちと交流してきた。そして2011年、震災が起こる。海辺の借りていた家が津波の被害に遭い、置いてあった作品とかけがえのない道具を、すべて失った。さらに原発事故が追い打ちをかけ、奈良県に自主避難した。そして6年半がたち、いま思う。
 「震災は、これまでの生き方やあり方を軌道修正するために与えられた、と捉えたい。いわばターニングポイントです。そのためには、どんなに意見が対立しても、許し協力し合い、ともに存在し合える道を探らなければなりません。それが震災後なのです。1人ひとり、人間として成熟することが求められています」

 「現代におけるスケールあふれる木彫表現の追求、ヒューマニズムの造形表現の深化に対して」―平櫛田中賞選考委員会からは、こう評価された。美術の流れと合わなくても媚びず、愚直に斧を持って手を動かし、納得するまで木を叩き続けた。そこから感じ、見えてくるものを大事にした。そのひたむきさと真摯な態度が、やっと認められた。それを心から喜んでくれたのが、30年にわたって見守り支えてくれた、市井の人たちだった。だから「本気でやっていれば必ずサポートがあり、道が開ける。これはみんなでもらった賞だ」と思えるのだという。


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